のらねこ物語 其の六「アワビ皿」/リリー
 

 左手を腰に当て、指で鼻の下こすりながら愚痴り始める

  今日も居間へお通ししたお客様にお茶をお出ししたら
  旦那様から 最初は褒められたんですよ。

 「おや、珍しいじゃないか!」
 
 「いえ、そしたらですね…。」
 話を続ける おゆう

  「これ、おゆう。おまえは田舎者だと思っていたが、どうしてどうして
   たいしたもんだ。今のお茶の持って来かたなんぞ、しずしずと、
   すり足をして来て、まこと、うまいもんだったぞ。」

  「はい。さっき板の間で飯粒踏んづけたんで、畳にすりつけ すりつけ
   歩きました。」

  ばか者めって叱られました。
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