のらねこ物語 其の五「三両のねこ」/リリー
、何気ない風を装って食事済ませた俺を抱き寄せる。
「ご亭主の飼い猫がどうも気に入った。三両で是非引き取らせては
くれないか?」
店主が承諾すると、薄く笑う男。
「猫は、皿が変わると餌を食べなくなると聞く。この皿も一緒に
持ってくよ。」
鉢を持ち去ろうとする男を、店主は制し告げた。
「猫は差し上げますが、この鉢は捨て値でも三百両という名品で
ございますから。売るわけにまいりませんなあ。」
「何だ!ご主人、あんた知ってたのか?コレが柿右衛門の逸品だと。
分かっていながら、何でこんな名品で猫に餌やってんだっ?」
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