小さなエイ、ポーラが笑う。/田中宏輔
 

ウププププ。
「あなた、サツマイモのにおいがするわ。
 それも生のね。
 けっして焼きイモじゃないわ。」
恋人のドリーム・スネークが
どもりながら反論する。
「き、きみだって。」
「きみだって、なによ。」
「きみのにおいがする。」
「あたりまえだわ。」
ふたりは、うんこで耳をふさぎながら
網膜を交換する。
ウププププ。
それとも
うんこが、ふたりの耳をふさぎながら
網膜を交換するのかしら?
けっして見てはならないもの。
「そんなことないわ。
 じゃんじゃん、見つめ合うのよ。」
だれに向かって言ってんだよ。
もう戻れない。
愚かなふたり。
こんなところ
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