ゆきみち/佐野ごんた
 

ゆっくり歩くこと
道を譲り合うこと
ありがとうを交わすこと
そんなあたりまえのことを
忘れかけていた

雪をふみしめる
靴底を貫通する冷気
しん、とした空気を吸い込むと
鼻の奥が悲鳴をあげた

郵便局はもうすぐだ

*.*・

ぼくたちは個々の幸せに向かって
急ぎすぎているけれど
非効率が支配していた時代を
思い出さなければいけない

自然をゆるし
互いの難儀を思いやり
人を赦し
罪をゆるし
自らをゆるす

そういう文化に育まれたい

*.

東京中の雪かきなんて
大それたことはできないけど
ずぶずぶになった足のついでに
階段と居宅前は除けておいたよ

君たちが
あんしんして歩けますように



とりあえず
足先の循環を確かめながら
湯が満たされてゆくのを待っている
時を、時代を

ありがとう
ありがとう



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