久保俊治著 「羆撃ち」を読んで/山人
 
に関しては優良な成績であり、有能なガイドだったようだ。
 一年後、故郷に戻り、フチと再会。再びフチとの羆猟に没頭するが、フチが十才を過ぎた頃、病死する。フチは死の前でも猟欲を失うことなく、最後の猟場を筆者と過ごした。
 「羆撃ち」はドキュメントであるが、単にレポート化しているのではなく、情景描写が巧みであるとともに、実体験からくる切迫感や、あたりに漂う匂いや音まで感じることができる作品である。商業的な意図をふんだんに感じられる作品にはない、事実であるが故の文字の重さや文体がそこにある。
 余談である。作品中に出てくる、猟犬フチの語源については何らかの意味があったのだろう。しかし、筆者は、小さな(ささやき声)でも聞き取れるし、うるさい時でも聞き取れる韻であるということから命名したようである。

 
 


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