桜前線/ミナト 螢
固く結んだ唇を
解く時が来た
まだやりたいことがある
諦めないで夢を見た
何度目の朝でも
バターを塗るように
目標の四隅に
春という風呂敷を広げて
もう一度だけ飛びたい
柔らかい風が
吹くのを待っていると
瞳の中で泳ぐ桜の花びらは
コンタクトレンズみたいに透き通る
すれ違う人の顔とか
咲いている花の匂いとか
淡いピンクのフィルターで
優しく補正されたりする時間を
感じながら
北上する前線に乗って
世界が明るくなるのなら
まあるい頬を見せ合って
やがて埋もれていく
桜が散る前に
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