よみがえる/ただのみきや
 
頭のにおい


時代が堕胎した
偶像から取り外された顔
印象は摩耗し素体に返る
埋葬された秘密
発見されない数多の墓
追うように追われるように
足にからまる地吹雪
歌うように咽ぶように
這いまわる天使
白い亡者の群れ
薬と散弾の見分けもつかず
妄想の楽園を求め
真似事の解剖学に浸るもの
自己は肥大し
牧場の家畜はやせ細る
与えることで奪う
それでないと維持できない
脆弱な骨格が老いた雛鳥の声で
憐憫の甘露に喘いでいる


わたしたちに箱舟はない
最初から
ゆり籠だったものが棺だった
それが世界であり楽園だった
見失うな己の棺を
固い外装とや
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