朝/岡部淳太郎
陽の光がまたたくせわしない時
誰もがどこかに向かって急いでいるが
なぜ急いでいるのか
その本質の答にたどりつく者はなく
ただそうであるからという
日常のために急いでいる
気の重くなるような義務と
預かった覚えのない責任
それらのために ゆっくりと
だが確実に気がふれてゆきながら
それでも この朝の爽やかさを呼吸する
そして噎せる
肉体の喉ではなく
魂が噎せてしまう
かたちにならなかった言葉が
舌の上で転がり始め
まだ残る昨日の夜の暗さと
これから確実に来るだろう
今日の新たな夜の芽を思い
文明以前の太古の朝も
このようなどうしようもなさを含んでいたのだろうかと思う
そして こんな朝を繰り返しながら
徐々に滅びてゆく人の未来を 幻のように見据える
(二〇二三年十月)
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