W/プテラノドン
して、明日も)
酒を飲んだ男の運転するバスの窓は、結露で曇っている。
乗客は気まぐれに外を見るためにだって、―不運にも乗客は、
「気まぐれ」に性格づけられていたために、
何度も手で拭かなくちゃならなかった。「指紋が消えるまでやるってのか?」
たまりかねたのか、気難しそうな手が言った。
そう。―本当に不運だったのは乗客は「手」だけだったってこと。
だから話を進めれば進むほどに、誰が誰だか見分けがつかなくなっちまう。
あらかじめとか仮説的にとかさんざん前置きしてから、
さてさてと、手をこすり合わせる詩人が(そいつはインチキだ)
「僕のとっておきのセリフで、さよならにしないか?」と言う。
しかしその時すでに、乗客達は雨あがりの街中へと手を振り去った後
運転手もどこか違う所で寝息を立てている。
真っ暗な停車場、その倉庫内に一人とり残された詩人はまず、
ホースでバスを洗い、それから
昔見た映画「ベストキッド」のやり方でWAXをかけている。
バスはくすぐったそうに揺れる。そして詩人はとっておきのセリフを口にする
戻る 編 削 Point(5)