空の門番/AB(なかほど)
あてもない夜を歩いていると
石門だけが残った丘の門番に出会った
夜も長いので空の話を聞かせてくれ
という ので
十二番目の石から昇る太陽について
ありったけの知っていることを語ってみた
それがあの太陽なのか
とその石の方角を見据えながら
門番は吐息まじりにつぶやき
ゆっくりとうなづき
一時の沈黙の後
やはりそうなのか
とまたうなづく
やがて僕は門番の仕事に気付き
得意になって続けて喋ろうとしていた月のことも
プレアデスやおおくまや
地球のまん中やパンゲアや
ティラノサウルスが走れなかったことや
ホプキンスやドレークの方程式なんかも
おそらく何も要らないのだろうことに気付く
喋ったところで
それがあの月なのか、竜なのか
と石を見据えるだけなのだろう
と
それから
僕は知らない星をいくつもつなぎあわせでたらめな絵を描き
とぎれとぎれの話を大きなとても大きな声で嘯くと
ようやく腰を上げた門番は無精髭でにこりとして
十二番目の石から昇る昼と夜のことを詠いはじめた
今も続く詩を
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