燃える!/
田中宏輔
いて椅子にすわる。)
夫──うわっ。かっ、火事だ!
(と言って叫ぶ声も、女たちの耳にはまったく聞こえ
なかった。火の勢いは信じられないほどに強烈で、
男は燃える椅子の上でたちまち灰となっていった。)
娘──きょうのおかずは何。
妻──あなたの大好物ばかりよ。
(微笑みあう母と娘。さりげなく沸騰する、やかん。
ふたりは動かず、舞台の上の照明が溶暗してゆく。)
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