肌で生きるエウロペ/菊西 夕座
 
波にむかって一直線 ふくす身を矢にかえて水をきる

悲嘆にくれたさなかにあって エウロペは露で苗床をしき
ゆめみる力で波紋をひろげては 幾千万もの穂をそそりたて
這った地へいを黄金にそめぬき みずらの髪にしたて風にそよがせる


2、

髪のなびきにみちびかれ 足もうごかせはじめたエウロペは
背にはてなく髪の穂波をしたがえて 広大な領地をかけてゆくも
穂波はしだいに左右にわかれては エウロペをとりまいて立ちあがり
どこまでかけて逃げても 巨大な壁となって恐ろしくせまりきた

やがて気がつけば腰はまた 純白の背にふかく根をおろし
波頭がはねまわる大海原をさいて 陸地から
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