卵の城/
たもつ
卵を割ると中には
砂しかなかった
食べ物を粗末にはできないので
そのまま火にかけると
砂の焼ける匂いがする
今ごろ砂場では妻と娘が
いつまでも完成できない
卵の城を作っていることだろう
もう一品、と思い
鍋に手を伸ばすけれど
指先から砂になって
僕は崩れ始める
何なのか知らない魔法が
解けたに違いなかった
妻と娘が帰ってくれば
既に二人の日常があって
僕はもう散らばった
砂ですらないのだ
(初出 R5.12.27 日本WEB詩人会)
戻る
編
削
Point
(8)