冬のばら/リリー
 
 小学校の正門前
 通学路を跨いで並び建つ民家の
 玄関先に置かれる
 バラの鉢植え

 通勤途中に
 つぼみが、
 いつまで経っても
 開かないわ と思っていたら
 その日
 薄茶色にしおれている

 かたく 巻いたままの
 花片が茶色くなったなんて

 「おはよう!」
 彼方まで 透きとおっていく青年の声は
 登校して来る子供達の靴音に響き
 耳にとらえきれないお喋りが
 細く 薄くなって
 どこか ものうく
 リズムの感じられないまま
 駅へ向かう

 ああ、冬晴れの空なのに




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