たわわな虚無/ただのみきや
 
しが
うすい被膜から透けて見え
傍から見ればさぞ気持ちの悪いことだろう
だが他人にマジックで顔を描かれたり
それを好みの顔に描き直したりしながら
情報の風にふわふわ漂うものの一つとなることで
時代や世界と繋がっていると思い込む
そんな実のある生活を大真面目で語るのを聞くと
こっそり針で悪戯したくなる
パン! と割れないで羊羹でも出たらいいね


雪は散るように降る
生と死のはざまに踊る羽虫のように
遠く山並みは幽玄をまとい
近くの樹々は黒い肢体を際立たせる
それは模倣された死であり
地にしっかりと受け止められて
底なしの虚無へ落ちることはない
雪は溶け 

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