たわわな虚無/ただのみきや
 

また凍り
やがて水になって流れ
気化して空へ帰る
こころは雪を映し
雪はこころを映す
人だけが迷う
考えること
感じること
真実はひとつの顔
ねじれた無数の階段で構築された
迷宮を包むひとつの表情
真理と呼ばれるものが
万人に心地良い鐘の音であって
何ら深い意味など持っていないのと同じように
記号であることばからは
あらゆるものが削ぎ落とされる
ことばを使役しているようで
人はことばに支配されている
そうして閉じ込められた奴隷として
今日もまた紡がされている
たましいの繭玉がすっかりことばに変わり
なにかが織り上がるころ
跡形もなく
羽化した虚無は
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