12月のカーテンコール/平井容子
 

その手のやわらかさだけ再生した

伝え残したことがあるとすれば
この悲しみも今世あなたがくれた
かけがえのない星でした



3.13月の魚たち

鍋のなかでむつこくなっている
あなたを覚えている
皿のうえで懐かしめるほどには
あなたを覚えていた

忘れないよと誓ったことから
角を失っていくのはなぜなのか
確実に減っていく涙の機会を
なぜ数えてしまうのか

泳いでいったんだね
(わたしたち)鱗のない風になってあなたの服を脱がす
あなたを抱いて眠る
それだけのために


4.祈り

目が冷めたらすべてが終わっています
再起動してください
再起動してください


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