音楽と精霊たち?/朧月夜
 
。一般人は、と言い換えても良いだろう。

 J・S・バッハと言えば、真っ先に思い浮かぶのは「ブランデンブルク協奏曲」だった。オルガニストを目指していた葉子にとっては、バッハのオルガン作品のほうが親しいのではないか、と思われるかもしれない。しかし、葉子の大学時代の友人は「ブランデンブルク協奏曲」を好んで聴いていた。最初はその良さが分からなかったけれど、葉子は次第にその曲に惹かれるようになっていった。

 今では、バッハと聞けば「ブランデンブルク協奏曲」の甘い旋律だけを思い浮かべる。それはどこかロココ調のようで、バロック時代の音楽としてはふさわしくないようにも思われた。もっとも、この偉大な作曲
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