Lの昇天?/朧月夜
 
。だから、同室の患者や親しくなった人たちにそれを配ることにした。そういった母親の訪問が、入院中に2、3度あった。そのたびに、Lは気まずい思いをしなくてはならなかった。その気まずさも、精神病院に入院している者特有のものなのだろうとLは感じた。

 3度の自殺未遂をしている、という婦人は、

「あなたはお母さんと仲が良くて良いねえ」

 と言った。その理由は分からなくもない。きっと、その婦人も自分の母親との思い出を思い出しているに違いなかった。そこに確執があったのか、Lとその母親との間のように穏やかなものだったのか、Lは想像が出来なかった。その婦人にはどこか秘密めいたものがあって、いくら話
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