Lの昇天?/朧月夜
った後は、Lが父親の面倒を見る番だった。
Lの父はLの入院中、一度も見舞いに来ることはなかった。どこか精神病や精神病患者というものを見下しているようなところがあった。Lの病気のことを恥だと考えていたのかもしれない。その娘に面倒を見てもらうということを、Lの父はどこか嫌がっている風でもあった。
H川の流れを見ている時、そんな父親の顔は浮かんでも、Lの母親の顔は浮かんでは来なかった。
(ここに母はいない)
と、Lは思った。
Lは死んだ人間にも魂が残る、とは思っていない。死ねばそれまでだ。それは眠りに着くようなもので、決して目覚めることがない。母親の最後を看取ってい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)