陽の埋葬/田中宏輔
 
月の夜だった。
  海は鱗を散らして輝いていた。
    波打ち際で、骨が鳴いていた。
     「帰りたいよう、帰りたいよう、海に帰りたいよう。」
   と、そいつは、死んだ魚の骨だった。
そいつは、月のように白かった。

月の夜だった。
  ぼくは、そいつを持って帰った。
    そいつは、夜になると鳴いた。
     「帰りたいよう、帰りたいよう、海に帰りたいよう。」
   と、ぼくは、そいつに餌をやった。
そいつは、口をかくかくさせて食べた。

真夜中、夜になると
  ぼくは、死んだ母に電話をかける。
   「もしもし、お母さん?
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