五行歌 二首/リリー
 
  「紛いもの」

 凪の夜

 寒空が黒いインク
 
 こぼした水面、すべりゆく

 遊覧船は

 まるで冥界の古城



  「中古マンション」

 三階で 物干し竿拭きに出て
 うっかり閉めた硝子戸の
 古くなったクレセント錠
 見てしまう クルリ落ちる瞬間を、
 唯 独り聞く朝烏の嗤い


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