ラジオが死んだ夜/ホロウ・シカエルボク
 
リアーなデジタルなんてなにかいけ好かない
結局何も買わずに出てきた

部屋で沈黙しているラジオのことを
部屋で沈黙しているラジオのことを

人生で二十七度目に自分をぶち壊そうと考えた時も
思い留まらせてくれたのは彼が教えてくれた下らない歌だった
仕方が無いので夕食の買物をして家に帰った

どうして黙っているの
真空管は永遠のモノクロ
燃え落ちた空みたいに瞳を閉じている
どうにもやりきれなくて
殺意を込めて野菜を切り刻んだ、バツンって
まな板までいじめながら

出来上がったカレーは美味だったけれど
ラジオが死んでしまったから
スパイスが舌に針を刺した




二十八度目は
誰か助けてくれるだろうか


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