陽の埋葬/田中宏輔
 
水裹(みづづつ)み、水籠(みごも)り、水隠(みがく)る、
──廃船の舳先。


舵取りも、水手(かこ)もゐない、
──月明(げつめい)に、


水潜(みくぐ)り過ぐるものがゐる。


新防人(にひさきもり)の亡き魂(たま)の
──その古声(ふるこゑ)に目が覚めて、


水潜(みくぐ)り過ぐるものがゐる。


呼び寄せらるる水屍骨(みづかばね)、


似せ絵のやうな
貌(かむばせ)。


──その貌(かむばせ)は、亡き新防人(にひさきもり)に、瓜二つだつた。


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