踊っている/塔野夏子
踊っている
歪(いびつ)な星の上で
バランスをとりながら
踊っている
踊っていないと
この星からこぼれ落ちるから
どこなのかわからないどこかへと
昔
この星は歪でなかったという
だからもっと楽に
もっと美しく踊れたという
けれど
それはお伽話にすぎないともいう
踊っている
踊れば踊るほど
この星は歪になるともいう
それも
お伽話にすぎないのだろうか
踊っている
時々失いそうになるバランスを
どうにか取り戻しながら
けれど時々いっそ
どこなのかわからないどこかへと
こぼれ落ちてしまいたくなりながら
昔
この星は歪でなかったと
それがお伽話にすぎなくても
過去への憧憬が
ふと未来へと反転することを
願ったりしながら
踊っている
戻る 編 削 Point(5)