冬の裸歩き/ただのみきや
 
のにおい
数珠繋ぎになって暴れ回る
あの名付けようのなかった違和の群れは
幻覚となって現れることでことばに捕縛されていった


外套は厚くなり
衣服は重ねられ
息を白くして人は街を歩く
街路樹は原罪以前のアダムとエバだ
鳥たちはまるく膨れながら
小さな瞳を風花に向け
かすかに頭をかしげる
なにか考えあぐねているかのように


自然は人には無関心だ
人だけがままならぬものに摂理を投影し
人以上神未満のぼんやりとしたなにかを想像して
ゆるやかな支配を暗黙に容認する
見える世界とうまくかみ合うための見えない世界観
こころを保護する被膜
行間やページの間に自分と
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