冬の裸歩き/ただのみきや
 
幼子のように


街中が雪をかぶっている
雲はうすく空に隙間もない
つがいのカラスがすずめみたいに膨らんで
ナナカマドの低木にとまっている
赤い実が冬至祭の飾りのよう
すべてがつめたく張りつめている
この日常に人の皮膚もなれてゆく
感慨深くてもぼんやりしていても
がむしゃらでも
息は白く 
生気はとどまらない
吸われてしまうのだ 
顔と顔が触れるほどすぐ傍にいる冬に


太陽の蕾
霧の中のバラ
海が胎からあふれるように
光は破れ出て産着を焼き尽くす
夢は灰を残さず
涙の水脈は地深く隠される
ふと欠片を見つけ
思い出そうとするが
するほどに遠のいて
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