冬の裸歩き/ただのみきや
 
冬のささやきに染まる頬
たぶらかされる唇もまた
つめたい 
熾火のよう 
ことばは
今朝の淡雪すら溶かしはしない
樹々を渡るすずめらの
目くばせほどのぬくもりも
変わらない距離で深まってゆく
空白で行方知れずのまま


さあとりもどそう
最初から失われていた
わたしの人型の洞
おまえにことばの身体を与えよう
さあ鳴り響け
匂い立て
風のような予感
煙のように不可解で
意味ありげな目くばせで
舞踏を秘めたことばの裸婦像よ
幾重もの錯誤と誤読
万華鏡の中で脱ぎ散らかして
美醜と善悪の四辻に立つ日時計よ
狙いすまして崩れかかる塔のように
叫ぶ聾唖の幼子
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