夜の旅路/レタス
静かな夜に独り酒をあおり
訳のわからぬ経を読み
華を散らし
伽羅を焚いた
想い人に手向ける夜だ
今となっては届かない俺の声は夜空に消えてゆく
あの時
こうあれば
ああすれば良かったのだったのかもしれない
まるで水のような君は
風のような歌を奏で
俺は水面に影を落とすだけで
想いを告げることは無かった
桜散る夜に消えた君の名を何度も呟き
ちりりんと鈴を鳴らして今夜も酒をあおる
汚れ切った俺は足跡を振り返り
重い荷物を引きずりながら
また独りだけ明日に一歩を踏み出す
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