M街のカフェで/番田
カフェの中というのは、不思議な空間だ。そのついたテーブルは自分のものではあっても、同時にそのカフェの客のための場所でもあると言えた。カフェ全体は、街とは隔てられた場所でもある。そこは店であって、通行人に対して開かれた場所ではないのである。そのテーブルにつくには何がしかの注文が必要であって、カップをテーブルに置いていることが必要であると言えた。テーブルからは、通りを行く人が外に見える。雨の日は傘を差している人が通り、晴れた日には犬を連れて散歩している人がいたりする。向こうには銀行があって、私がテーブルについている時間には開いていることはなかった。だからそこからこちらを覗いている人はいない。いくつかの
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