香水の詩/
ミナト 螢
冬になると
思い出す香りがある
ストーブよりも冷たくて
だからこそ肌の上で
物語を読み始める
不安が消えない日は
何か楽しいことを考えたり
柑橘系の甘酸っぱさに
腐ることのない夢を包んで
オブラートのような
月曜日を溶かしたくなる
生身のままなら
傷付いてしまうことも
香りを纏った心で
守り続けられると思う
雪だるまだとか
もみの木だとか
形あるものばかり愛されても
目に見えない香水の輪郭を
誰かに褒めて貰えたら
僕の内側で冬が始まる
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