アップルパイ/福岡サク
 

孤閨(こけい)の痛みに耐えかねて 真夜中 菓子焼くキチネット
はちみつ計ってバタ練つて お粉がタルクでないのがつらい
蜜と油にあまくなめされ しっとりひかる 此の両手
貴方のくちにさしいれたくて うっとりうずく くすりゆび
“秘めごと”重ねたパイ生地で 
とろ火の情炎(ほのお)で煮た“罪の実”を
くるんで仕上げた アップルパイは 
あまりに上手に出来すぎて
お茶の支度をしたいのだけど とても母さまには出せませぬ
父さまに差しあげるは口惜しいし 兄さまになどとてもとても
やつぱり貴方の不在が痛い 貴方の唇 ないのが痛い
真夜中 菓子焼く “魔道”の所業
魔女のいいひと いまどちら?
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