冬の匂い(捨てられた林道で)/山人
 

寒さが冬のにおいを連れてやってきていた
葉はそれぞれに、その存在を主張することもなく
いたずらに冬待ちの時間を費やしていた
そしてそれら樹々や草、虫ですらも
冬が来るということを知っていた
かつて車道だった林道の土と小石は
冷たく、私の独り言すらも受け流していた



標高九百メートルの平地の山道には
うっすらと雪が積もり
まるで感覚のない手で
わずかに残った山の幸を掻き取ってゆく



冬が来る
押し黙った、何も語らない冬が
雪の匂いとともにやってくる
そして、私も
口を開くことはなかった
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