口笛 (旧作)/石村
 


一雨過ぎればそれはがらんどうな九月の空

晴れた午後には青いト短調のひとふしが流れる

鳥の運命しか知らない僕らは

夏ぢゆう播き散らされた花の残り香に狂つて

澄んだ微風の失意に気付きもしない

ああそれでも秋の光線が水晶の夢を引き裂くから

硝子の夕暮には口笛を吹いてプラタナスの路を行かう

懐かしきものみな喪はれ めぐる日々に静かなかなしみは帰る――



         (一九九六年八月二十七日)



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