稜線/妻咲邦香
 

幌馬車にゆられ
ぽつんと大地に置かれた
ゆられ、ゆられて
何処でもない場所に産み落とされた
幌馬車の上で巡り会う
出会いと同時に別れの挨拶もした

私に仕事を与えてください
信じることで美しくなれるよう
切り立った稜線をなぞるように翼が渡る
それを捕まえたくて子供らは駆け出していく

私たちはよく手入れされた汚物の上に暮らし
絶えず注がれる不思議さに忙しなく首を傾げる
そうやって習慣を増やしていった

幌馬車にゆられ
人はいつまでも赤子のままで
ゆられ、ゆられて
話し足りない議題を抱え
実った果実を見ることもなく立ち去る
それは風のようでもあり
私も
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