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塔野夏子
あまりにも純粋で
故に果敢(はか)なく捉えがたく
けれど
強く深く
轟きでもあり
静寂でもあり
満ちあふれ
けれど虚ろで
鋭く
けれどやわらかく
かぎりなく甘やかでもあり
はてしない痛みでもあり
そして ただ打ち震えて
数多の
失ったことも
得なかったことも
このことを識るためだったのならば
このことの
名付けがたさを識るために
全ての言葉が存在するのならば
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