森の童話 (旧作)/石村
 



耳を澄ませば年を経た森の童話。
海よりの黒い夜風に濡れて
千の天使が鳥よりもひそかな物語を囁く
打ち捨てられた古代の四月。


 (狩の女神が嘘つきな鈴を鳴らし
  箒星を見ながら少年は銀の骨になる)


朝のおぼろな光に充たされて
たれもがはじめての愛を幻からはじめる時
薫る薄紫の空気に酔ひ
楡の葉かげに眠るオルフェの頬にいつか春の雨。


      (一九九六年七月二十五日)


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