とりあえずの無糖/妻咲邦香
 
最初に好きな色を決める
ほんとはどれでもいいんだけれど
聞かれたら困るから決める

駅までの道のりがいつもより遠くて
それでもいつもより頼もしく見えるから
挨拶ちゃんと言えるかな
ネクタイも曲がってないかな
何でもない町に何でもない一日
詰め込めるだけ詰め込んだ
大きな声から小さな声まで
とっておきの意地悪も今日はおあずけで
きっと喉が乾くからって
立ち止まる自販機の前

貴方の帰っていく空が私には見えない
大きな山を動かした
それはいけないことだった
叱られると思ってた
画面の隅で震えてた
誰でもない人でいたいけど
これから順に描き込まれていく目鼻と口、眉毛までも
今日が特別な、当たり前の日となって
当たり前の一日に当たり前の人がいる
当たり前だから、歳をとっても変わらない
どんな奇跡も見逃さないと誓う

並んでご飯食べたって
本当はすっごく遠く離れたお互い別の宇宙なんだと
貴方の帰っていく空が少しだけ覗いてる
誰もが通り過ぎる道、踏み出せないで輝いて
良いのが無いからウーロン茶を選ぶ


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