陽の埋葬/田中宏輔
 
を埋もれさせたまま、

雨に肘をついて、待つてゐた。

肋骨(あばらぼね)の上を這ふ、
──雨に濡れた蝸牛(かたつむり)。

雨に透けた蝸牛(かたつむり)は、
──雨のやうにきれいだった。

手に取ると、すつかり雨になる。

戸口に佇(た)つて、
──扉を叩くものがゐる。

コツコツと、
──扉を叩くものがゐる。

庭立水(にはたづみ)。

わたしは、
──何処へも行かなかつた。

わたしは、
──何処へも行かなかつた。

死んだ父もまた、
──何処へも行かなかつた。

戸口に佇(た)つて、
──繰り返し扉を叩いてゐた。

戸口に佇(た)つて、
──繰り返し扉を叩いてゐた。

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