正午/妻咲邦香
 
める

時々風が見えてしまうことがある
それは果たして悲しいことなのかどうか
それでも
ありがとうを言わない一日もある
美味しいと思えない食事もあるように
誰も思い出さない夕刻もある
客船を怖がる島もある

空は「空」という物質で埋められている
それはゼリーのような物質で
そのゼリーを掻き分けて鳥は進む
時々喉に詰まらせて窒息するみたいだけど
堕ちない
ゼリーに埋もれて死んでいる
浮かんだまま、鳥の、翼を広げたその姿のまま
死んで、視界の奥で
いや記憶の手前で
いつか消化されるのを待っている
それを私たちは「飛んでいる」と誤解をしている

簡単に狂っては
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