壊れた受話器に泣かないで/ホロウ・シカエルボク
 
動く癖が子供の頃から変わらないんだ、退屈に慣れることなんてきっと一生ないだろうな、それだけは約束出来るよ、退屈に慣れることだけは一生ない、それは人生の終わりってやつさ、記憶の断片は散らばるに任せておけばいい、それがいつか誰かの新しい遊びのヒントになることだってあるかもしれないだろう、もしかしたら俺も小さなころに、どこかでそんな落とし物を拾ったのかもしれないな、例えばそれは、壊れた受話器だったかもしれない、それはあらゆるコミュニケーションの象徴であり、終焉だ、だから俺はこんなものを書き続けなければならないのだ、共感に逃げ込むなんて御免だね、俺はいつか、自分にしか通じない言語になりたい、そのために指先を動かし続けているんだ、路地を歩き倒したら家に帰ろう、帰ろうという気分になってからじゃないと、本当に家に帰ることは難しい、ねえ、それが、真実ってもんじゃないか、水出し珈琲は頭をぶっ飛ばしてくれる、俺は金を払い、ドアベルを鳴らしながらもう一度外界に躍り出る、偽物の清潔みたいな見世物がまかり通っている、弾切れなんかしないぜ、無駄撃ちは昔から大得意なんだ。


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