陽の埋葬/田中宏輔
 
 苦悩というものについては、ぼくは、よく知っているつもりだった。しかし、じつはよく知らなかったことに気がついた。ささいなことが、すべてのはじまりであったり、すべてを終わらせるものであったりするのだ。たぶん、ぼくはいつもどこかで苦しみたいと願っていたのだろう。古い苦しみを忘れて新たな苦しみを見つけようとするところがあるのだ。愛が、ぼくのところにふたたび訪れるというのはよいことだ。たとえ、それがすぐに立ち去ってしまうものであっても。一つの微笑み。その微笑みは、ぼくの記憶の一部でしかなかった。それなのに、その微笑みは、ぼくの喜びのすべてを代表して、ぼくのこころを、その微笑みでいっぱいに満たすのだ。マコト
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