十月末、心の置き場を探す日々/山人
りはそうなのである。心は晴れをイメージしても、外は暗鬱な雨が支配している。それが現実というものであり、ゆるぎないほどそれは堅牢に出来ていて、爪を立てても傷すら入らないのである。それはぬるま湯から寒い外気に触れる様な感覚でもあった。
十月は後半になった。些細な日雇い仕事もあと一か月少しで終わることとなる。一年たりとも平穏な仕事に就くということがない私たちはまるで越冬カメムシのようですらある。冬の顔をつくり、冬の言葉を発し、冬の落胆やわずかな希望をポケットに少し入れて日々を生きていくということ。次第に失われてゆくもの、剥ぎ取られてゆくものを見送る日々の中を生きていかなければならない。
生きるということは簡単ではない。でもそんなに難しいことではない、そう思うしかないのだから。
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