コインランドリーのテーブルで/番田
知らない街に続いていく川の知る、景色を歩く。時間が川だとしたら、遡ったところにいる僕は、朝の報道番組や、色々な、生きてきた時間を、僕は思い出すのだろう。僕はもう、そこに、僕は思うように戻ることはできないのだが、思い出す、繰り返すようにして。誰もいない工事現場に降っていた雨を。ハワイに着いた時に僕を包んでくれた生暖かい風。青年になった僕の通い慣れていた渋谷のクラブに流れていた音楽を。そんなことを今日も考えながら、生きていた。
スポティファイから流れている音楽に今日は寒いのだろうと思う。人は誰もいない。外には畑が広がっている。土の匂いが少しする時。自転車が走り抜けていく時に曲は、R&Bの懐かしい歌に変わった。皮膚病を治すために長い道のりを歩いて病院通っていた。昔ジョギングコースを走っていた頃の僕の姿を思い出しながら、そこへ営業車で訪れた僕の背中。秋の夕暮れ時だったのか。夏の暑い日だったのか。スーツ姿でコインパーキングに車を停めた僕の耳に聞こえた学校のプールからのはしゃぎ声を思い出す。あの会社を辞めてから、どのくらいたったことだろう。
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