美しい灰/ただのみきや
先が
沈んでゆく
白い背中を奏でようとわなないて
ぼくはまだ雨の顔を見ていない
ファスナーを下ろして
自問する 時間が
草木のような肉体をまとう
しめやかに 汚されて
まなざしは口づけのよう
浸透する一粒の雨が
秘密を打ち明けることはない
風のかいなをすりぬけて
無限に降下する
同一の本質をもつ
無数の悲しみに顔は生まれない
ただ痛点で受け止めて
自らを滲ませる
夜と溶け交じり
錆びた風見のように血の中で眠ったきり
(2023年10月21日)
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