美しい灰/ただのみきや
 

青い四つの瞳を眠らせて
つま先が当たれば砕け散る
枯葉のような風体

上の階の壁にも同じ蝶がいた
クジャクチョウ
越冬して春一番に現れる
二羽は夢を見ている
まだつめたい春の日差しの中
人となって見つめ合う夢を

突然ひとりが春の霞にとけて消えた
残された瞳に空はなにもなく
目覚めてもなにもないのだ
なにかはわからない大切なものが




君が好き

自らの死を撫すりながら
やせた鳩の群れが赤い空で溺れているのを眺めていた
人は真の意味で考えたり感じたりはほとんどしないのだ
すでに定めた自分の立ち位置の周囲と是非を共にする
話を振ったり 
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