決意 (旧作)/石村
 


その朝出来たばかりの仔猫の屍体に、
雪は、しらじらと降り積つた。

屍体は、何にも語らなかつた。
木枯は夜通し窓を鳴らしてゐた。

雪はしらじらと、しらじらと降り、
屍体は何にも、語らない。

僕はその夜、全く思案に暮れてゐたが、
それは、激しい煩悶だつたが、
屍体は、何にも、語る気が無い。
それはつましく、自分の為にだけ微笑んでゐるのだ。
その間にも、雪はしらじらと、しらじらと降る……

成程、まあ、この位の事は判る。
人は、詰り骨になる覚悟をさへすれば、
用は、足りるものであるらしい。
それにしても、雪はしらじらと、しらじらと降る……

人生の答も、何時か口癖となり
今日も日当りの良い橋の上を急いで歩かうと思ふ。


      (一九九一年十月二十五日)



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