北に向かつて歩く一日 (旧作)/石村
長い雨があがつて
まるい空には素敵なパレツト(ひたむきな青)
傘を一本ぶら下げて、僕は旅人になつた。
やはらかな叢に踵をぬらし
見果てぬ夢は遠く投げられ
北極星に向かつて尽きない抛物線を
傘を振りふり僕はなぞる。
さやうなら草雲雀
僕は急いでゐるんだ。
とぼけた自転の圏内を
ひと足早く脱け出して
君が睡つてゐるかるい朝
僕がめざすのはそれだ。
虹色の風にくちづけするのは! たまらない……
あまくいたづらなセンチメンタル
宝石を覆しても午後は虚ろに翳り
秋の陽射しのすゞやかな禊(みそぎ)。
(一九九一年十月十三日)
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