怒られ短歌2/妻咲邦香
 
名もなくて我人なれど土におり
名を尋ねてはそなた月なり



引き返す世界の果てをのぞき見て
鬼の名前を恥じてなお秋



迷い雲、遠きにありてめえめえと
紡ぐは淡き縁の細糸



鞭毛で行き先決める鍵かける
三角コーナー生ゴミ捨てる



三日月の親戚だよと言う男
どう見ても中途半端な睫毛



正夢を無心に咀嚼せし獣
現の花の苦きは美味か



飛びたくて、でも飛べないのではなくて
私は空を選ばなかった



もし私いなくなってもこの柿は
なり続けるか歌うが如く



私をね見て歩くのもいいけれど
後ろ向きだと危
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