無題/朧月夜
はない。ましてや、石や岩ではない。透徹した生命である。我々の誇りが、我々の所業によってたとえ無に帰するものだとしても、我々はまず疑わねばならない。あなたは、それを受け入れねばならない。我々は、小鳥ではない、岩ではない、と……。ああ、こんな蛇足的な言明が何を意味するだろうか。現にあなたたちは生きている。そして、発語し、会話し、一人の海へと沈んでゆく。それが自然なのだ。我々を救うものは、我々自身の存在可能性によるしかないのだと。海は、海だ。……誘うように、それは語り始めた。
戻る 編 削 Point(2)